/ Kisho Mwkaiyama

展示会場
(06)KURA HOUSE
《Konohanasakuyahime》 2025
《Konohanasakuyahime》 2025
About Works
[キュラトリアル・コメント]

向山喜章の本作には、比叡・高野・大峯といった山岳信仰の地に象徴される、日本固有の「深山の祈り」が息づいている。早朝の寺院に灯る蝋燭の光、山麓から吹き上がる風、そして天より降り立つかのような光の気配ーそれらは作品の内部で繊細に交差し、静謐で精神性の高い空間を生み出している。
向山は、代名詞ともいえるワックスを用いた作品を経て、近年では繊細な色彩のコントロールが際立つ紙の作品やキャンバス作品へと表現領域を広げてきた。「色」とはすなわち「光」であり、その新たな光は空間と心を同時に照らす。ひとつの点からの光線が、あたたかな厚みをもつ一枚の面へと織り上がっていくような構造は、向山の作品の核と言えるだろう。その重層的な光の広がりは、かつて織物に従事した人々の営みに静かに寄り添い、円環を描くような祈りのかたちとなって、富士の裾野をやわらかく照らし出す。
70年超の時を刻んだ蔵の空間に並ぶ4点の作品は、互いに響き合いながら空間を浄化し、穏やかな調和をもたらす。ワックスの“衣”を纏うかのような質感と、淡い光を含む清らかな色調が交錯する画面は、山間の縁に立つかのような感覚を鑑賞者にもたらし、長い時間をかけて培われた土地の記憶を呼び起こす。こうした表現の深化は、向山の新たな境地と精神性の広がりを象徴しており、本展ではその結晶ともいえる世界観を密やかな存在感をもって形象化されている。

[アーティスト・ステートメント]

山々には 比叡や高野、大峯山など観られる山岳信仰の深山の祈りがあり
早朝の寺院に蠟燭(ろうそく)灯り 山麓から吹く横風 光は天より降り立つ

ひとつの点は光線となり 風光の糸はやがてあたたかな厚い一枚の面となる

織物に従事された尊き蔵へ届く円形の祈り 富士の裾野を優しく照らす

山間の縁 ワックスの衣(ころも)着て
Artist Profile
向山喜章 / Kisho Mwkaiyama

向山喜章 / Kisho Mwkaiyama

1968 年大阪府生まれ、現在は東京を拠点に活動している。 向山は幼少期を日本有数の密教の伽藍が立ち並ぶ高野山で過ごし、周囲の静謐な環境やそこに存在する密教美術に触れてきた。その原体験は、向山が初期より一貫してモチーフとして扱ってきた光という根源的な存在態へと繋がっていく。代表作ともいえるワックスを用いた作品では、光に姿を与え固定化するような試みを続けてきた。様々な色相がワックスとともに固定化された作品は不可視の領域を可視化させ、美という概念そのものを問いにかけるようで、高い評価を得ている。近年では繊細にコントロールされた色彩を素材として扱い、数十回に渡って塗り重ねられ制作されるキャンバス作品を発表しており、幾様にもその姿を変えながら、歴史、光、人の精神といったキーワードとともにその表現領域を拡大している。主なパブリックコレクションとして、森美術館(東京)、横浜美術館、軽井沢現代美術館など。