高須賀活良

/ Katsura Takasuka

《NEGENTROPY(ネゲントロピー)》
Curator’s Text
出展作品タイトル:《NEGENTROPY(ネゲントロピー)》

高須賀は、長年テキスタイルの専門家として、この富士吉田周辺で活動してきた作家です。しかし彼の視野は、専門家としての単なる技術的な知識にとどまることなく、テキスタイルの存在の定義から、そのエコシステムの可能性へと深めてきました。 一年前に制作した「土から始まるキャンバス」「土に還るキャンバス」では、雑草から取り出した繊維で織ったキャンバスに白亜紀の地層から採取した岩石を砕き、それを顔料としてペイントした作品で、それは作られたものを「土に還す」取り組みの一つでした。
今回の作品は、廃物となっていた古着を糸に還元し、それを用いて3x3メートル程度のキャンバスを制作し、そこにメディウムとして土や水を塗布するものです。それが時間の経過とともに土に還っていく過程を可視化しました。それはある意味でテキスタイルの誕生から死までを一つの物語として描き、それを作品へと昇華させることだといえるでしょう。そこに現れるのは、テキスタイルという素材に仮託して描く人間の営みの歴史であり、さらにいえば、死と再生の壮大なエコシステムです。
タイトルのネゲントロピー(negentropy) は、生命系が、 エントロピーの増大の法則に逆らうように、エントロピーの低い状態が保たれていることを指す用語です。 それはものを作り続けてきた彼が、ものを作らないことの価値を描くことでもあるのです。 今日、環境問題が大変重要になってきていますが、高須賀はその大きな問題に、テキスタイルのエコシステムを描くことで、応えようとしています。
Artist Profile
高須賀活良 / Katsura Takasuka

高須賀活良 / Katsura Takasuka

1986年東京生まれ。東京造形大学でテキスタイルデザインを学ぶ。在学時は日本各地を旅し、その土地にある素材にインスピレーションを受け作品を制作。大学院では、モノづくりの始まりは「土」からであるというコンセプトのもと、原始布の研究をし、2011 年 修士号を取得。現在はアーティストとして国内外で作品の発表の他、織物産地でのテキスタイルデザイン、ファクトリーブランドの立ち上げ、アートディレクターとして幅広い分野で活動中。2016 年からは 1,000 年以上続く織物産地、山梨県富士吉田・西桂の織物産地プロジェクト「ハタオリマチのハタ印」総合ディレクターに任命。 近年の展覧会に2011年「I love 絹」(群馬県立美術館)、2014年「cloth&memory 2」( solts mill /UK)、2021年 高須賀活良「Species」展(gallery hinoki / 銀座)、2022年「素材-その形と心 The Material―Its Form and Spirit in ISETAN SHINJUKU」などがある。