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Goro Murayama

展示会場
旧糸屋
《頑健な情報帯》 村山悟郎 撮影:吉田周平
《頑健な情報帯》 村山悟郎 撮影:吉田周平
Curator’s Text
この作品は、村山が製作した手書きの素描《同期/非同 期時間のセルオートマトン[手描き] pt.2》 を見た手塚愛子(2021年テキスタイルウイーク出展作家)がそのコンセプトに興味を持ち、素描を現実化することを提案したことから始まりました。そして富士吉田の機屋の協力を得て、実現したのがこの新作です。
セルオートマトンはマス目状のチャートを空間と時間に見立て、そのユニットに局所的な規則を与えることによって 様々なパターンを生成することができる数理モデルです。このモデルは生物の生成・成長の過程にも発現することから、村山はこの数理モデルに生成と死、機械と人間の創造プロセス、といった多様な問題を読み取り、これを発展させました。
今回の作品は、この数理モデルのプログラムを用いて、そこから生じるパターンの性格を分析し、その規則性とランダム性を比較しています。またそこから生命理論や情報工学の分野で体系的に論じられるようになった「情報のロバストネス (頑健性)」を測ることができるとも語っています。そして彼はそこから生命と環境の絶妙なバランス=寿命の必然を読み取ります。また一方で、この織物のロバストネスを、デジタルデータの物理的記録メディアと重ね合わせ、それがコンピュータの原初的機構で機能するジャガード織機の仕事に立ち現れ、実在化するというのは、極めて意味深いと考えています。


プログラミング:巴山竜来(数学者/専修大学准教授)
制作協力:株式会社 槙田商店
Artist Profile
村山悟郎 / Goro Murayama

村山悟郎 / Goro Murayama

1983年東京生まれ。アーティスト。博士(美術)。自己組織的なプロセスやパターンを、絵画やドローイングをとおして表現している。2010年、shiseido art egg賞を受賞。2015年、東京芸術大学美術研究科博士後期課程美術専攻油画(壁画)研究領域修了。2015-17年、文化庁新進芸術家海外研修員としてウィーンにて滞在制作(ウィーン大学間文化哲学研究室客員研究員)。近年の展覧会に、2022年「瀬戸内国際芸術祭」男木島 / 香川(’19)、「Drawings – Plurality 複数性へと向かうドローイング〈記号、有機体、機械〉」PARCO Museum TOKYO / 東京、2020年 個展 「Painting Folding」 Takuro Someya Contemporary Art / 東京、2019年「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」 愛知県美術館、「L’homme qui marche Verkörperung des Sperrigen」クンストハレ ビーレフェルト、 「The Extended Mind」 Talbot Rice Gallery、 スコットランドなど。現在、NTTインターコミュニケーションセンター(ICC)にて新作「Painting folding 2.0」を発表、手製の織物絵画から「Alpha fold」の予測計算を介して現実に存在しうるタンパク質構造をデザインする試みを展開している。

photo: Yoi Kawakubo