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Junko Oki

展示会場
旧糸屋
作品イメージ|anthology
作品イメージ|anthology
Photo by Gu Kenryou
Curator’s Text
出展作品タイトル: 《anthology》

沖はラグのような布に刺繍を施す。刺繍の描き出すイメージは、比較的単純な円形あるいは、楕円形のものが多い。その大きな図柄から周辺に多数の糸が伸びている。地となる布は、洗濯物のように上から垂れ下がり、あるいはパッチワークした旗のように四角い形で壁に展示される。さらに平面から逸脱し、白い石に針を刺したような作品や、かごの中に入れられたクッションの様な物体、さらに箱に入った人間の身体の一部のような不定形の作品もある。いずれの場合にも糸が縫い付けられ、重ねられ、彫刻を覆い、織物のような表情も見せている。作品のあるものは女性器の隠喩にも見えるが、一方で古びた工芸品や古布のように干からびた味わいがある。その点を敷衍して言えば、ここに見られる美学は詫び寂びに通じるものなのかもしれない。いずれにしろ、抽象的でフェティッシュな作品群は、糸という素材を絡めながら、不可解な魅力を持って存在している。作者は刺繍の枠を超えて、その領域を拡張しつつある。
Artist Profile
沖潤子 / Junko Oki

沖潤子 / Junko Oki

1963年浦和市生まれ、鎌倉市を拠点に活動。生命の痕跡を刻み込む作業として布に針目を重ねた作品を制作。下絵を描く事なしに直接布に刺していく独自の文様は、シンプルな技法でありながら「刺繍」という認識を裏切り、観る者の根源的な感覚を目覚めさせます。古い布や道具が経てきた時間、またその物語の積み重なりに、彼女自身の時間の堆積をも刻み込み紡ぎ上げることで、新たな生と偶然性を孕んだ作品を生み出す。存在してきたすべてのもの、過ぎ去ったが確かにあった時間。いくつもの時間の層を重ねることで、違う風景を見つけることが制作の核にある。
主な個展に「Recycle」(ARTS & SCIENCE ⻘山、東京、2009)、「gris gris」(DEEʼS HALL、東京、2016)、「月と蛹」(資生堂ギャ ラリー、東京、2017)、「JUNKO OKI」(2017)/「Truly Indispensable」(Office Baroque、ブリュッセル、2019)、「anthology」(山口県立萩美術館・浦上記念館、2020)、「沖潤子 さらけでるもの」(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館、2022)、「蜜と意味」(2018)/「よれつれもつれ」 (KOSAKU KANECHIKA、東京、2022)が、主なグループ展に「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ 2018」(文翔館、山形、2018)、「現在地:未来の地図を描くために[2]」(金沢 21 世紀美術館、石川、2019)など。2014年には、自身の撮影による作品集「PUNK」(文藝春秋)を刊行。作品は金沢 21 世紀美術館に収蔵。また、2017年に第11回shiseido art egg 賞を受賞。

協力: KOSAKU KANECHIKA