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Seiran Tsuno

展示会場
旧文化服装学院
作品イメージ|ねんねんさいさい
作品イメージ|ねんねんさいさい
Photo by Gu Kenryou
Curator’s Text
出展作品タイトル: 《ねんねんさいさい》

幼少期の津野にファッションへの道を示した祖母が臥床生活になったことから制作した本作は、祖母のために”オーダーメイド”した衣服である。祖母が長年集めてきた布と3Dペンで作られた衣服には、肌に触れる部分に柔らかい布を利用し、介護ベッド上でも着れるようにするなど、祖母と共に身体の変化に向き合ったことがわかる。本作のタイトルは、祖母がよく口にする「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」(意訳:毎年、花は同じように咲くが、人の変化は同じではない)という言葉からくる。牡丹の花をモチーフにした本作は津野と祖母の家族愛を体現し、また自宅介護の中で見え隠れする生死の輪郭を示すようでもある。
津野は作家活動と並行して精神科の看護師として当事者研究という、日常の様々な体験や困りごとを”研究テーマ”として扱い、自身がそのテーマについて仲間と共に研究する自助的な活動の現場に触れてきた。現在大学で⾐服と「ファット」な⾝体の関係を研究する津野にとって、研究とは自身と向き合うことを意味する。展示されるドローイングたちからも読み取れるように、本作は津野と祖母に共通する「ファット」な身体との向き合い方を扱う、いわば自身の「当事者研究」の結果の一つでもある。それは単なる精神科学的な取り組みより、もっと個人史的で、慎重な所作である。
Artist Profile
津野青嵐 / Seiran Tsuno
Photo: Kohei Shikama

津野青嵐 / Seiran Tsuno

1990年生まれ。看護大学を卒業後、精神科病院で約5年間勤務。学生時代より自身や他者への装飾を制作し発表。病院勤務と並行して山縣良和主宰のファッションスクール「coconogacco」で学ぶ。2018年欧州最大のファッションコンペ『ITS』にて日本人唯一のファイナリストに選出され、3Dペンで作った服が注目される。2019年10月より、新たなファッション表現の可能性を探りに“当事者研究”発祥の地である北海道“浦河べてるの家”(精神障害当事者等の地域活動拠点)へ勤務し、リサーチと制作を行う。2021年10月より東京工業大学リベラルアーツセンター教授の伊藤亜紗研究室で学びながら、「ファット」な身体との付き合い方を、衣服の共同制作を通して研究中。​​