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Asami Kiyokawa

展示会場
KURA HOUSE
作品イメージ|わたしたちのおはなし
作品イメージ|わたしたちのおはなし
Photo by Gu Kenryou
Curator’s Text
出展作品タイトル: 《わたしたちのおはなし》

古びた3階建ての日本式の蔵があり、その2階と3階に作品が展示してある。周囲は板敷きの床と壁である。素っ気なく、また木造建築の温かみが感じられる。この特異な空間に清川は9点の作品を展示している。2階には数点の本をベースにした作品がイーゼルに置かれている。本は入念に刺繍され、その糸は本のページの外へとあふれ出ている。楽譜をベースにした作品「別れの歌」は、楽譜の上に刺繍を構造的に配置したもので、リズムを感じさせる構成主義的なデザインとなっている。その中の一点は、本展のために作られたもので、小室浅間神社の祭神・木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)の神話からとられたものだ。
3階に上がると大きな作品Serendipityシリーズの新作がある。重厚なマチエールを持ち、絵画的である。刺繍という技術は糸の技術である。絵画に糸という素材を持ち込むことは、絵画を彫刻にすることだ。清川は2次元と三次元の間を往還しつつ、そこに絵画、音楽、文学のポエジーを生み出している。
Artist Profile
清川あさみ / Asami Kiyokawa

清川あさみ / Asami Kiyokawa

兵庫県淡路島生まれ。90年代より雑誌の読者モデルとして注目を集め、2000年代には文化服装学院にて服飾を学びながら、「ファッションと自己表現の可能性」をテーマにアーティストとしての創作活動を開始。2001年に初個展「SAUCE」を開催して以来、国内外で多数の展覧会を開催し、その活動は常に高い注目を集める。ソーシャルメディアや雑誌などのメディアシステムを通して日々膨大な情報に晒される社会で、個人のアイデンティティの内と外の間に生じる差異や矛盾に焦点を当て、可視化する。写真や雑誌、本や布に刺繍を施す独自の手法を用いた作品でよく知られ、代表作として「美女採集」「Complex」「TOKYO MONSTER」などのシリーズがある。近年は表現・活動の領域を広げ、衣装、広告、映像、空間、プロダクトデザインなどのクリエイティブに携わるとともに、絵本の制作や地方創生事業にも取り組む。