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Anri Ikeda

展示会場
旧山叶
作品イメージ|それぞれのかたりて / 在り続けることへ
作品イメージ|それぞれのかたりて / 在り続けることへ
Photo by Gu Kenryou
Curator’s Text
出展作品タイトル: 《それぞれのかたりて / 在り続けることへ》

何十万枚もの薄い皮膚のようなものが、何重にも丁寧に、使い古された家具や衣類たちの表面にレイヤーされている彫刻作品たち。機織り機など大型機械を生産していた旧山叶で実際に使われていた家具やユニフォーム、そして池田が富士吉田市でリサーチの中で会った人たちの古着や私物が繭のように覆われている。表面を形作る薄い”皮膚”たちは、富士吉田に住む、テキスタイル産業をこれまで支えてきた人たちの手足をシリコンで型取りして一枚一枚作られている。それはいわば誰かの手垢のようで、ゆっくりとモノや空間の表面に積雪され、数多の職人や従業員がかつてはこの工場跡を行き来していた歴史を示唆する。

池田杏莉は喪失の痕跡を、モノや空間の中から浮かび上がらせることで、それぞれの”かたりて”の物語の収束点を作るという。床に敷かれた黒い落ち葉のような皮膚たちを踏み割りながら工場跡の残り香に「耳をすませる」我々にとって、それは畏怖として映るかもしれない。ただ、時に芸術はそういった静かな向き合いを見届けるところに、意義があると考える。
Artist Profile
池田杏莉 / Anri Ikeda
Photo: Junpei Hosoda

池田杏莉 / Anri Ikeda

1997年、福岡県生まれ。 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻在籍 。
パリ国立高等美術学校に交換留学 。千葉県を拠点に活動。人々に使い古された古着や家具といった物や、
皮膚の型の収集 。また、その物に関する記憶について、インタビューを通して「それぞれのかたりて」をテーマに彫刻や、インスタレーション、パフォーマンスを発表。
使い古されていくにつれて、色褪せ、歪んでいく衣類や家具。
それらは、人々の身体の 癖や匂いといった特徴に寄り添い 、身体性を帯びていく 。また 、皮膚は時間が経つにつれて、剝がれ、少しずつ生え変わり、絶えず 私達の 体内外で、身体を消費させながら、毎日、毎時、毎分と、その都度変化し、誕生と死別を繰り返している 。
池田は、その身体と物との間にできる必然的な関係性と、自身の「身体を喪失する」経験から、喪失した存在と対峙する空間の中で、私達に何を語り、想起、想像をさせるのか、見つめている。
A TOM ART AWARD 2022 ソノアイダ賞 、アーティスト イン レジデンス ソノアイダ 新有楽町に参加 。

協力: 作品制作に、ご協力頂いた富士吉田のみなさま